企業経営に、なぜSDGsが必要なのか
「SDGs」、「持続可能な開発目標」という言葉は、日本国内においてもメディアなどで取り上げられる機会も増え、広がりを見せてきています。しかしながら、企業経営においてはSDGsをビジネスチャンスと捉える企業はまだ少ないのが現状です。
今回は、なぜ企業経営にSDGsが必要なのか、企業経営へSDGsを導入してくための5つのステップについて解説します。
SDGsはビジネスチャンスを生み出す鍵になる
日本経済団体連合会(経団連)は、2017年に「企業行動憲章」の改定にあたって「『Society5.0』の実現を通じたSDGs(持続可能な開発目標)の達成」を柱とした行動原則を定めました。
「企業行動憲章」とは、経団連の会員企業約1350社(製造業やサービス業などの主要な業種別全国団体、地方別経済団体47団体などを含む)に対して、遵守を求める行動原則のことです。
「Society5.0」は、I o T(Internet of Things)やAI、ロボット、ビッグデータなどの革新技術をあらゆる産業や人々の暮らし、社会全体に取り入れてイノベーションを創出し、一人ひとりのニーズに合わせる形で社会的課題を解決する新たな社会とされています。
そこで、経団連では「Society5.0」の実現を通じたSDGsの達成を柱として「企業行動憲章」が改定されました。
SDGs達成には企業の創造性とイノベーション力が不可欠であると同時に、企業はSDGsを経営戦略に組み込むことで、大きなビジネスチャンスを得ることにつながります。
SDGsの達成は、環境、エネルギー、都市開発などの分野で年間12兆ドルの経済価値がもたらされると試算されています。
SDGsは非常に包括的であるために国際機関や政府だけでは達成できず、SDGs達成に不可欠なパートナーとして企業があります。今後、企業にはSDGsを経営戦略に統合しイノベーションを発揮していくことが期待されます。
企業がSDGsの活用を進めるメリット
近年、SDGs達成に向けた取り組みを行っている企業は増えています。
環境省は、SDGsを活用することで、企業に4つのメリットがあると示しています。
- 企業イメージの向上
SDGsの取り組みをアピールしていくことで、取引先の企業からの信用や「この会社で働いてみたい」という印象を与えることにつながる
- 社会課題への対応
SDGsには社会が抱えている様々な課題が網羅されており、これらの課題への取り組みは経営リスクの回避と共に社会貢献につながる
- 生存戦略になる
今後、SDGsへの対応が取引先との条件になる可能性もあり、持続可能な経営を行う戦略として活用できる
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新たな事業機会の創出
SDGsを共通言語に、新しい取引先や事業パートナーの獲得、新たな事業の創出の機会を生み出す
このようにSDGsに取り組むことは企業に多くのメリットをもたらします。
2017年に開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)において、ビジネス&持続可能開発委員会(BSDC)は、2030年までに「企業がSDGsを達成することによって年間12兆ドル規模の経済価値がもたらされ、最大3億8,000万件以上の雇用が創出される可能性がある」と発表しています。
SDGsという世界共通の目標達成に貢献できる事業に取り組むことは、大きなビジネスチャンスにつながり、反対にSDGsに関与しないことはビジネスチャンスを逸することを意味します。
企業へSDGsを導入してくための5つのステップ
企業へSDGsを導入していく指針として「SDGsコンパス」というものがあります。
「SDGsコンパス」は、企業がSDGsを経営戦略と整合させて、SDGsの貢献を測定し、どのように管理していくのかを5つのステップで説明しています。
- SDGsを理解する
企業は17の目標のみならず、169のターゲットも含めて理解する。SDGsの世界的な動向についても情報を集める
- 優先課題を決定する
SDGsを事業機会と捉え、自社の強みを生かせる分野を探す。企業のバリューチェーン全体を通して、事業活動がSDGsに及ぼしているプラスとマイナスの影響を把握して、SDGsの優先課題を決める。
- 目標を設定する
目標を設定し、具体的なアクションを考える。社内外で優先的事項を共有し「見える化」することで、企業として持続可能性に対するコミットメントを示すことができる。
- 経営へ統合する
中長期目標や企業の中核的な事業の中にSDGsの項目を組み込んでいく。さらに、ヒト・モノ・カネの経営資源の投入と関連づけていく。
- 報告とコミュニケーションを行う
目標や経営方針が決定したら外部に報告・コミュニケーションを行う。企業の様々な情報発信の中で目標や経営方針を開示し、関係者と協働することが重要
このうちのステップ2からステップ5を繰り返しながら、SDGsを実践していきます。
おわりに
SDGsは、世界共通言語としてあるべき理想の社会を描き、さまざまな取り組みが幸福度(Well-being)の向上につながる道のりを示しています。従業員がSDGsを自分ごとして考える企業風土をつくることで、一過性では終わらせない持続的な取り組みを社内に浸透させていくことができます。
SDGsへの関与と「企業の持続可能性」は、今度より一層密接な相関性をもつようになるはずです。
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