知っておきたい!デリケートゾーンのケア
「かゆい」「おりものが変」「ニオイが気になる」など、婦人科の診察でもデリケートゾーンのお悩みは全ての年代において比較的多い相談です。一方で「実はかなり前から気になっていたが我慢していた」という方も多く、困っていながらも我慢している方が実際はかなりいるのではないかと思います。
子どもの頃、一人でお風呂に入れるようになると、体の洗い方や髪の毛の洗い方を教わり、夏は日焼け止めを塗ることや乾燥する時期は保湿することなど、お肌のケアを身に付け実践していますね。
では、デリケートゾーンはいかがでしょう。きちんとケアできていますか?
今回はそんなデリケートゾーンのケアについてお伝えします。
目次
デリケートゾーンの基礎知識
デリケートゾーンとは、性器とその周辺のことを指す造語です。デリケートの意味を辞書で調べると「繊細な」「こわれやすい」などの意味なので、なんとなくあまり触れてはいけないだとか、隠すべきことのような印象となり、ゆえに外陰部について語ることや正しいケア方法などは、あまり見聞きする機会もないまま大人になっている方も多いと思われます。
たしかに、外側にむき出しになっている手足や体の皮膚に比べ、性器の皮膚は薄く、常に下着やナプキンなどの刺激を受けます。また、通気性が悪く菌が繁殖しやすいという意味では、適切に扱いケアすることが必要な繊細な場所とも言えるかもしれません。
一方、膣や子宮につながる大切な場所だからこそ、善玉菌のはたらきにより弱酸性に保たれ、悪い菌が簡単に侵入できないようになっており、出産時には柔軟に引き延ばされて、10cmもの赤ちゃんの頭が通過できるようになるなど、実はけっこうタフな場所でもあるのです。
体の部位や臓器には、それぞれ大切なはたらきがあり、それがきちんと機能するための状態に保つことが日々のケアの基本となります。
では、デリケートゾーンの場合はどのようなケアが必要なのか確認していきましょう。
デリケートゾーンの日々のお手入れ方法を紹介
ここでは、デリケートゾーンの日々のお手入れ方法について解説します。
①洗い方
大事なことは、洗いすぎないことです。基本的には、入浴時に指の腹を使ってお湯で優しく洗う程度で構いません。ニオイや汚れが気になりソープを使いたい場合は、デリケートゾーン専用のソープを使う必要があります。デリケートゾーンには自浄作用があり、善玉菌のはたらきによって弱酸性に保つことで良い状態を保っています。
一般的な石鹸やボディーソープは、アルカリ性のことが多いため、これでしっかり洗ってしまうとせっかくの自浄作用を弱めてしまうことになり、結果的にトラブルを起こしやすくしてしまいます。
➁保湿
体の保湿はみなさん意識していると思いますが、デリケートゾーンこそ保湿が重要です。婦人科でそうお話すると「え?でもココって常に潤っているじゃないですか?」と言われることもしばしば。
しかし「湿っている=保湿されている」ではありません。前でもお話しましたが、デリケートゾーンの皮膚はとても薄いのです。ということは、肌の持つバリア機能や保水機能も他の皮膚より弱いということです。手足の乾燥のように、見た目でカサカサして白く皮膚がめくれているわけではありませんが、バリア機能や保水機能を保てないと、かゆみやかぶれ、ニオイ、黒ずみなどの原因となります。
デリケートゾーンの保湿剤はクリームやオイル、ローションなど様々なものが市販されています。使用感やお好みに合わせて選んでみましょう。必ずしも専用のものでなく、体に使用するものと同じでも構いませんが、外陰部にはあまり匂いの強くないものがいいでしょう。
③生活習慣
1)免疫力を高める
疲れが溜まっている、寝不足、偏った栄養などで抵抗力が落ちていると自浄作用が弱くなってしまいます。栄養バランスのとれた食事、十分な睡眠、ストレスを溜めないなど、規則正しい生活を心がけましょう。
2)腸内環境を良くする
「腸内フローラ」という言葉を聞いたことはありますか。腸内にはたくさんの細菌が生息していて、同じ種類で群れになっている様子がお花のように見えることからこのように呼ばれます。腸と同じように膣にもフローラがあり、膣内フローラを善玉菌優位の状態に保つことは、デリケートゾーンのトラブル防止のみならず妊娠率にも影響するほど大切なことです。
腸と膣は近い場所にあるため、腸内フローラは膣内フローラに影響していることが分かっています。したがって、食物繊維や発酵食品などを積極的に摂取し、腸内環境を良くしておくことが膣内環境を良くすることにつながります。
特に意識したい閉経以降のケア
月経がある年代では、エストロゲンという女性ホルモンのはたらきによって外陰部の粘膜は守られ、良い状態を保つことができています。しかし、閉経後、エストロゲンの分泌が低下すると性器組織が萎縮し、膣は薄く弾力が落ちます。また粘膜が薄くなり保水機能も低下するので、かゆみやヒリヒリするような違和感、性交痛、ニオイなどが気になるようになります。
婦人科の診察では、更年期を過ぎた年代での受診理由で最も多いのがこのお悩みです。「歳だからしかたない」と諦めて放置していたという方も多いですが、対処する方法があることを知ってほしいと思います。
これら外陰部の不快症状は、命に関わる病気というわけでもなく些細なことかもしれませんが、毎日のことなのでとてもストレスになり、気持ちや行動にも影響します。
毎日を快適に、やりたいことを楽しむためにデリケートゾーンケアを始めましょう。
まとめ
いかがでしたか。デリケートゾーンを良い状態に保つためには、日々の生活習慣とケアの積み重ねがとても大切です。さっそく今日から取り組んでみましょう。かゆみやニオイ、おりものの異常には性病が原因の場合もあります。性病ではなくても、お薬を使うことで早く良くなるものもあります。辛い症状や気になることがあれば婦人科を受診しましょう。
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