理学療法士が解説!妊娠中の運動の効果やメリットとは?
妊娠中は新たな命をおなかの中で支えながら、出産への不安や体調の変化に不安に思うことも多いと思います。
今回は、妊娠中にどんな運動を行うとよいのか、運動の開始時期、強度、注意点なども含めて解説します。
妊婦さんは運動不足に要注意!?
厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告2020」によると、妊娠適齢期とされている、20~40歳代女性の運動習慣を有する者の割合は、9.4%~12.9%と他の年代よりも低いという報告があります。
身体活動は、非妊娠時より妊娠期の方が、妊娠初期より妊娠後期の方が低下する傾向にあります。普段、運動習慣がない方は、つわりやどんどん大きくなるお腹の影響で、1日の多くを座ったり横になったりして過ごしている時間が多くなると予想されます。運動不足によって、下半身の筋力が低下する可能性が示唆されます。
妊娠中から適切な運動を行い、出産や産後の育児に向けても、必要な体力をつけていく必要性があります。
妊娠中に運動を行うメリットとは?
妊娠中に起こる身体の変化は実にダイナミックです。お腹が大きくなっていくだけでなく、食欲が増して体重が必要以上に増えていくこともあります。体重の増え過ぎは、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症などのリスクを引き起こすきっかけにもなります。妊娠中の運動によって、それらの合併症の予防や適正な体重コントロールが可能になります。
またお産に関しては、分娩時間の短縮、緊急帝王切開率の減少、早産率の低下、低出生体重児の減少などの効果もあると言われています。
妊娠中の運動を安全に始めるために
ここでは妊娠中の運動を安全に始めるためのポイントを解説します。
①運動を開始する時期
妊娠3か月以降から少しずつ始めていくことが推奨されています。
ただし、切迫早産、早期胎盤剥離、妊娠高血圧症候群がある場合は、運動が禁忌になる場合もあるため、随時かかりつけ医に運動内容や頻度などを相談しながら進めてください。
➁おすすめの時間帯は?
子宮収縮出現頻度が少ない午前10時~午後2時頃が妊娠中の運動に適しています。
③おすすめの運動は?
一般的には、ウォーキング、水泳、ヨガ、ピラティスなどが挙げられます。
特にヨガは、ここ数年で身近なボデイーワークになりました。ゆったりとした動きのため、運動習慣が少ない方にも始めやすく、妊婦さんも無理なく自分のペースで取り組むことができます。
外国のある研究では、ヨガを行うグループとウォーキングを中心とする出産前エクササイズを行う群を比較したランダム試験では、ヨガ群が28週目の計測で胎児の頭の大きさ、推定胎児体重、血流の流れやすさも良好な数値であり、妊娠高血圧腎症、妊娠糖尿病などの発症が少ない結果になったという報告もあります。
ただし、妊娠中のホットヨガはエネルギーを消耗しやすく、体内の水分が不足し脱水になる可能性もあるため避ける必要があります。
④運動の頻度・強度
日本臨床スポーツ医学会・産婦人科部会「妊婦スポーツの安全管理基準(2019)」には、心拍数で150bpm以下、自覚的強度としては「ややきつい」以下で、息切れせずに会話できる程度が望ましいと記載されています。連続運動を行う際は、自覚的運動強度としては「やや楽である」以下が推奨されています。
もともと運動習慣のある方が、妊娠中に運動を行うことは安全とされていますが、普段運動習慣のない方は、医師や助産師などの専門職に相談しながら行うようにしてください。
⑤注意!妊娠中に避けるべきポーズは?
妊娠中は、うつ伏せになりお腹を圧迫する、腹圧がかかる動き、お尻の位置が頭よりも高くなる姿勢、身体を強くねじるポーズ、開脚やランジ(足を前後に大きく開く動作)などのポーズは避けましょう。
また、恥骨に違和感がある場合は、股関節を前後左右に広げるポーズをとると、恥骨痛が悪化するリスクがあるため避けてください。
まとめ
妊娠中の肩こりや腰痛、むくみなどといったマイナートラブルは、軽い運動で緩和されることがあります。妊娠中は無理のない範囲で、自分の体調に合った運動や強度を守って行うと良いでしょう。
本来であれば、妊娠する前から運動習慣をつけておくことが、妊娠中でしか感じられない体験や産後の赤ちゃんとの時間を思いっきり、自分らしく楽しめることにも繋がると思います。
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