理学療法士が提案する妊娠に向けた身体づくり
不妊治療は、とてもデリケートかつ深刻な問題です。今この時もありとあらゆる可能性にかけ、様々な治療法を試みている方はたくさんいるのではないでしょうか。不妊症の割合は近年増加しており、日本では5.5組に1組のカップルが悩んでいると言われています。
今回は、不妊の原因と妊娠に向けた身体作りについてお伝えしていきます。
目次
不妊症の方の数が16年で5倍に
不妊症とは、1年程度の期間避妊せずに性交しているものの、妊娠しない状態で、医療的治療が必要な状態のことを指します。また、流産を繰り返すこと(不育症)も挙げられます。
2022年に体外受精をして出生したお子さんは、10人に1人の割合(約7万7000人・過去最多)でしたが、2008年は50人に1人でした。社会背景もありますが、たった16年で5倍のスピードで不妊が進んでいます(日本産科婦人科学会より)。
不妊は”妊娠できない”だけが問題ではなく、妊娠できない身体のコンディションであることを考慮せずに、治療が進んでいくことが課題であると感じています。
妊娠・出産したあとに待っている子育てを、お母さんが心身ともに健康に過ごせるためには、妊娠前からの身体づくりがとても大切になります。
不妊の原因は女性側だけではない
世界保健期間(WHO)の報告によると、女性因子が原因とされる割合が41%、男性因子が24%、女性と男性の両方の因子が24%、原因が不明なケースが11%と報告されています。
女性の不妊の原因は「排卵因子」「卵管因子」「頸管因子」「子宮因子」「免疫因子」「原因不明の因子」などがあります。
男性側は「造精機能障害」「精路通過障害」などが挙げられます。不妊の原因は、人それぞれに異なります。
今後、妊活を見据えてブライダルチェックを受けようとお考えの方は、ぜひご夫婦そろって検査されることをお勧めします。
効妊娠しやすい身体づくりのサポート
妊娠を目指す女性に対して、身体の調整や生活習慣の改善を通して、妊娠しやすい身体環境に整えていくことが可能です。妊娠前から産後まで、長期的な身体作りを行っていくことが大切です。
妊娠前の身体づくり
まずは妊娠するために、身体の土台となる栄養についてお伝えします。
不妊の方の食事の傾向として「栄養不足」「低血糖傾向」「消化力不足」「脂質制限」などが挙げられます。特に、糖質制限や朝食を抜く(食事と食事の間が長い)と、自律神経の乱れが生じ、精神的な不安定性や睡眠の質にも影響が起きます。
1日3食、特に朝はごはんの糖質を取り、夜は消化に負担がかかりすぎない食事を心掛けましょう。
妊娠前の体力作り
身体を整える上で最も大切になるのが「呼吸」です。女性は、ホルモンの影響で自律神経が乱れやすくなったり、ストレスがかかると呼吸が浅くなっていきます。
妊娠において大切な、骨盤内の血流促進を促すためにも、横隔膜を使った腹式呼吸を行いましょう。
<方法>
①お腹と胸に手をあて、お腹と胸が一緒に動くように意識して行います。
②一度息をゆっくり吐き切ります。
③そこからお腹と胸が膨らんでいくよう意識しながら5秒かけて息を吸います。
④ゆっくりとお腹と胸がしぼんでいくように、息をなるべく細く長く吐き切ります(可能であれば10秒~15秒かけて)。
この呼吸を1日5回×3セットを目安に行いましょう。
まとめ
不妊の原因も治療方法も人それぞれ異なります。治療が必要な場合は医療の力を借りつつ、日々できること(食事、睡眠、運動)の正しい知識を知って、まずはできることから始めてみてください。
私自身も不妊治療を経験し、医療のおかげで母親になれましたが、自分自身が妊娠するための身体のコンディションが整っていないままの妊娠であったため、妊娠~産後の身体の不調が続き、その時に妊娠前からのケアの必要性を痛感しました。
また、女性側だけが病院に通い、仕事との両立も抱えていくと、精神的にも身体的にも大きな負担が強いられていきます。不妊治療は、夫婦で一緒に向き合っていき、先が見えない不安の中でも夫婦で一緒に取り組む過程の中に、新しい命が宿る可能性、目に見えないパワーが育まれていくのだと思います。
今現在も悩んでいる多くの方に、正しい知識が届くことを願っています。
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