会社が知っておきたい産後うつの予防と対策
現在、4人に1人は発症する可能性があると言われているのが「産後うつ」です。誰がなってもおかしくない病だからこそ、正しい知識を知ることはとても大切です。また、女性だけでなく男性の産後うつもあり、周りから理解されにくく悩まれている方もおられます。育休後に、産後うつの影響から職場復帰が困難になる方もおられます。
今回は、産後うつの正しい知識と育休後に職場復帰する労働者に対して、事業者側が大切にしたいことをお伝えします。
目次
産後うつは誰にでも起こりうる病
「産後うつ」とは、出産後に心が不安定になる状態のことを言います。産後は、さまざまなストレスがかかりやすく、子どもの夜泣きなどから不眠に陥ったり、気分の落ち込みが激しくなったりするケースも少なくありません。
産後うつの主な症状としては、食欲低下、全身の倦怠感、不眠、赤ちゃんを可愛いと思えない、急に涙が止まらなくなる、などが挙げられます。
産後うつは、軽度なものから重篤なものまで個人差がありますが、一般的なうつ病と同じ症状が現れるため、適切な治療を受けることが大切です。
産後うつは仕事復帰後にも出てくる可能性がある!?
産後うつは、産後1か月以内に生じることが多いと言われており、育休中に産後うつを経験される方が多いと思います。
産後うつを経験された方は、日が経つにつれ、職場復帰への焦りや不安を感じることが多いです。
「このままの状態でちゃんと仕事ができるのだろうか」「上司や同僚に迷惑をかけたくない」このように、職場復帰について強く意識すると、うつ状態が悪化するケースも少なくありません。
さらに、産後うつは、職場復帰後に発症するケースも存在します。なぜなら、出産を経験した方は、何年経っても産後です。産後うつは、出産後1~2年経ってから生じることもあります。
「育休を終えたので、もう体調は万全だ」と思う方もいるかもしれませんが、職場復帰後も体調には注意して、無理のない働き方からスタートしていきましょう。
産後うつの回復期間は人それぞれ
産後うつの回復期間は、一般的には6か月~1年と言われています。しかし、長い場合は2年以上続く方もいます。実際に、私の知り合いの方でも、産後5年経つにもかかわらず、精神安定の薬が手放せない方もおられます。
症状が残った状態で復職すると、状態がより悪化する可能性が高いと感じます。そのため、一般的に定められた育児休暇の期間に合わせるのではなく、個人の心身の状態を見ながら職場復帰の時期を検討することが大切です。
職場復帰する職員のために事業所ができる支援
産後うつは、出産を経験した女性なら、誰でも陥る可能性があります。自分から「産後うつ」を発症したと職場に伝えられる方は少ないのではないかと感じます。そのため、すべての労働者が安心して職場復帰できるように、事業所は積極的に復職支援に力を入れることが大切です。
職場復帰予定の方、または職場復帰してすぐの職員と面談する機会を設ける
育休から復帰した女性は、休んでいる間に迷惑をかけた分を何とか取り戻したいという思いから、無理をして仕事をしているケースが良くあります。しかし、職場では、直接上司や同僚などに悩みを相談できる時間がない場合が多いため、1人で抱え込んでしまう場合が少なくありません。
そのため、産業保健師や人事担当者は、ストレスや疲労がその方の心身に影響を与える点について、現場の上司などに説明し、理解を求めることが大切です。また、実際に本人と面談する機会を設け、体調やメンタルの状態などをゆっくり話せる環境を整え、復職支援をすることが大切です。
医師や専門機関への相談を促す
本人との面談の際に、気分の落ち込みや意欲の低下などが見られる場合は、産業医との面談や精神科・心療内科などの受診、カウンセリングが受けられる専門機関への相談を提案してみることをおすすめします。
社外にも相談窓口を設置する
プレゼンティーイズム(従業員が心身の不調を抱えながら仕事をしている状態)は、目に見えない部分も多いです。また、現状で産後うつのような症状が出ていない労働者であっても、日ごろから相談できる窓口を会社外に設けておくことも安心に繋がります。
心理的な部分は、社内ではなかなか言いづらいという場合が多くあると思います。
また、社内研修などの機会を通して、みんなそれぞれ違うことで悩んでいたり、身体や心の不調があるということを知ること、自分自身が自覚できる機会を設けることが大切です。
まとめ
産後うつは誰がなってもおかしくないと感じています。産後うつにならないように予防することも大切ですが、もしなったとしても、できる対策があることを知っておくことは大切です。
今現在、悩んでおられる方やそのご家族様は、とても辛い想いを抱えておられると思います。何か一つでもお役に立てる情報を届けられたなら幸いです。
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