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デンマークの福祉施設ニョードルム・ケアを視察しました

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9月9日〜9月12日に開催されたデンマークの視察ツアーレポートの第2弾。

2回目の今回はデンマークの福祉施設「ニョードルム・ケア」です。
デンマークのオーフスを拠点に、福祉施設、保育園などを手がけるコンセプトデザイン会社「ニョードルム・ケア」が手掛けた、「ニュ・ホイトフト(Ny Højtoft)プロジェクト」「ニョードルム・ホーム」を視察しました。

 

ニョードルム・ケアとは

ニョードルム・ケアの高齢者施設

 

Njordrum Care(ニョードルム・ケア)は、すべての人が心地よく安心して暮らせる「場」を創出する、デンマーク発の建築・デザインスタジオです。自然と調和するシンプルで美しいデザインに加え、光の入り方、素材の質感、音環境、色彩など、人の心理や身体に与える影響を科学的根拠(エビデンス)に基づいて丁寧に設計しています。障がいの有無や年齢を問わず、住む人一人ひとりが自分らしく暮らせる柔軟な空間を提供し、“Hygge(ヒュッゲ)”人間観(Menneskesyn)を体現。建築とケア、環境と幸福感をつなぐ持続可能な福祉のあり方を提案しています。

 

ニュ・ホイトフト( Ny Højtoft)プロジェクト

デンマーク・Hvalsøに2024年春に完成した、成人や高齢の自閉症の方のための新しいコミュニティ型住居です。グループホーム、シェア居住空間、個別ユニットを組み合わせ、自立した生活と人とのつながりを両立できるよう設計されています。

建物は木造モジュール構造で、増設や移設がしやすく、内外装には自然素材を使用。光や音への配慮も徹底されています。また、自閉症の方が安心して過ごせるよう、静かに一人になれる場所や、交流を楽しめる共用スペースを自分で選べる工夫が施されており、心地よい距離感で暮らせる環境となっています。

 

ニョードルム・ケア完成完成予想図

全体完成予想図

 

ニョードルム・ケアの内装イメージ図

内装イメージ図

 

こちらの施設は、個人情報保護の観点から内部の見学はできませんでしたが、一般住宅として建てられた「ニョードルム・ホーム」も見学させていただきました。

ニョードルム・ケアの大きな特徴は、1つの部屋(モジュール)が約48㎡の木造建築で構成されている点です。各モジュールは工場で製造され、トラックで現地に輸送されて設置されます。工場生産にすることで天候の影響を受けずに建築できるほか、設計図面の簡略化により工期を短縮し、職人の労働環境にも配慮した合理的で無駄のない建築が実現されています。

 

また、モジュールは現地で土台のような基礎の上に載せる形で設置されます(写真参照)。これは土地の生態系や植物への影響を最小限に抑えるための工夫です。通常の現地建設では、足場を組む際に土を掘り返したり植物を伐採したりすることがありますが、ニョードルムではそうした影響を避けています。さらに、使用する資材も自然に還る木材を中心としており、環境への配慮と人の「心地よい暮らし」の両立を目指した建築となっています。

 

ニュ・ホイトフト外観

ニュ・ホイトフト外観  

 

モジュールの足場

モジュールの足場

 

内装にもニョードルム・ケアの特徴がよく表れています。
ニョードルム・ケアが“ケア”の面で大切にしているのは、「光」「色彩」「音響」「自然」の4つです。空間全体はやさしい色合いでまとめられ、天井には吸音パネルが設置されており、視覚や聴覚への刺激をやわらげる工夫がされています。また、大きな窓からは外の自然が見渡せるようになっていて、室内にいながらも自然とのつながりを感じられる設計になっています。


デンマークでは「エネルギーを無駄にしない」「家は人にとって心地よく安心できる場所であるべき」という考え方があり、高い断熱性能を持つ家が一般的です。ニョードルム・ケアもこの考えを取り入れ、どの部屋も一年を通して20℃前後の快適な温度を保てるように設計されています。

 

ニョードルム・ホームの内装 

ニョードルム・ホーム内装 

 

ニョードルム・ホームのドアノブにも工夫

ドアノブにも工夫がされてある

 

日本の福祉施設では、まだ利用者本人の「心地よさ」よりも、ケアを提供する側の「効率性」が優先されている場所も多いと感じています。

 一方で、ニョードルム・ケアでは、誰もが心地よく暮らせる場を目指し、住む人だけでなく、昆虫や植物といった自然環境、さらには住環境をつくる労働者の環境にまで配慮したデザインがされています。そこには、人間だけでなく自然と共に生きるという考え方が形になっているようでした。

また、五感で感じる「居心地の良さ」がありながら、機能性とデザイン性も兼ね備えた空間で、実際に「自分の両親にもこういう施設で過ごしてほしい」と感じましたし、私自身も「ここで暮らしたい」と思えるほど魅力的な環境でした。

ヘルスケアのこれから

今回の視察では、建築とケアの関係、そして持続可能な福祉のあり方について学ばせていただきました。どんな人でも健やかに暮らせる住環境を実現するための根底には、「ノーマライゼーション」の考え方や、デンマークの人々が大切にしている“Hygge(ヒュッゲ)”の価値観があることを体感しました。

なかでも、ニョードルム・ケアの現場を通して感じたのは、「心地よさ」や「快適さ」を大切にする姿勢です。デンマークにある“Hygge(ヒュッゲ)”の文化、そこに専門的な知識、環境への配慮、自然との共存といった視点が加わることで、より豊かなケアの形が生まれているように思います。

また、今回一緒に視察した「パッシブハウス・ジャパン」も、省エネで快適に暮らせる家づくりに取り組んでいます。このニョードルム・ケアの考え方と、パッシブハウス、そしてヘルスケアを組み合わせることで、日本でも誰もが心地よく過ごせる空間をつくっていきたいと思います。

この記事を書いた人

伊藤彰浩

株式会社MEDI-TRAIN代表取締役
日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー/理学療法士
健康経営エキスパートアドバイザー
スポーツ整形外科でトップアスリートや子どもから高齢者まで幅広い年代に向けたリハビリテーションを経験。
現在は、首都圏を中心にアスリートや産前産後の女性のリハビリテーション、コンディショニングを行っている。
その他、企業の健康経営サポートや医療・介護福祉施設でのリハビリコンサルティングも行っている。

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